20080727

灯油倉庫跡。



 戸の古い住宅街に突然現れた空き地の壁。

ここの空き地は門で閉ざされ、戦争を経験したであろう倉庫と共に遺跡のような石壁だけが蔦に覆われていました。本当に、小さな「遺跡」のように壁が遺っていたので、誘われるように蔦をかき分けて入ってしまいました。夢中で撮影していると、門のむこうからおばあちゃんが覗いています。そりゃあ、昼間に若者がカメラ持って荒れ地に侵入していれば訝しむのも訳は無いでしょう。

「こんにちは、ここはいつ頃からこのような土地なんですか?」
先制攻撃を繰り出しました。本当に気になった事と、怪しまれてはいけない、という意味を込めた挨拶。廃墟侵入で培った挨拶です。あとは、ずっとおばあちゃんのターン。

元燃料会社の倉庫だったものが廃業になり、だんだんと屋根がはがれ危険が増したために壁を残して取り壊されたものだそうです。おばあちゃんが丁度お嫁に来たのが昭和30年頃だったようで、その頃には稼働率はすごかったようで、山形などから出稼ぎにきた人が燃料を運ぶためにこの辺りを回ったりしていたそうな。ここから少し離れた団地にも従業員はたくさんいて、当時は油のドラム缶などを手で運んでいたらしい。
そして、入り口にあった倉庫には当時娘さんが描いていた油絵が保管してあるらしい。灯油倉庫と明記された倉庫に今は油絵が保管されているとはなんともはや。

今はこの燃料会社は廃業し、すぐ角の家で奥さんが暮らしているのだとか。なるほど、確かに角の家は石壁で覆われ、大きな倉まである。そしてさらに、2年近く前につぶれたすぐ近くのガソリンスタンドもここの所有物だったそうだ。まさかあの味のあるスタンド跡がここの所有物だったとは思いもしなかった。
こんなに詳しいおばあちゃんは、空き地の隣の家の住人でした。挨拶していてよかった。

しかし、こういった古い町の老人に話を伺うのは本当におもしろい。
「このあたりは昔はなんもなかったんだ」
「あれはあたしがお嫁に来たときだから…」
等の台詞にはいちいち感動してしまう。

なにはともあれ、通報されなくてよかった。
挨拶は法を越える!

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